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さて、グレナダで出会った少女テティスに“お願い”されて人捜しをすることになったコウとマーク。

ふたりは、その捜し人についてテティスに話を訊くことにしたのだけど。


「昨日から帰ってきてない・・・って、捜すのはテティスちゃんの家族の人?」

コウが質問すると、テティスはうーん、と少し首をかしげて。

「ちょっと違うかなぁ。一緒なお家には暮らしてるんだけれど」と言う。

・・・何か訳ありなのかな。そう思ったコウは、それ以上訊くのもどうかと思い軽く相づちを打って。

それから次の質問をすることにした。

「じゃあ・・・その、捜す人の特徴とかを教えてくれる?」

「うん。えっとね・・・」

訊かれてテティスは、捜し人について話し始める。

それを訊いて、コウとマークはとても驚いて。

そして自分達の耳を疑った。



テティスが話してくれた捜し人の特徴は、こうだ。

『セレス』という名前で、男の子。歳は17歳。

外見特徴・・・背は低め(テティスよりは低いらしい、ちなみにテティスは157cmだそうだ。関係はないけれど)。

髪を腰あたりまで伸ばしている。などなど。

ここまでは、別に何という事はない。普通の青年かとも思うような内容だった。・・・けど。

コウとマークが驚いたのは、その先。


・・・長くとがった耳。


「コウ・・・それって」

「・・・ああ」

ふたりが考えたことは同じだった。


『エルフ』


長くとがった耳は、エルフの身体的特徴。

・・・どういうことだろう。

テティスは、さっきこう言ったのだ。


“一緒な家に暮らしている”


目の前にいる少女テティスは、エルフと暮らしている?


・・・それは信じられない話だとコウ達は思った。

人間とエルフは、古くからにあるのだ。これまでの歴史のなかで

それら種族間で交流があっただなんて話はただの一度も聞いたことがない。

そもそもエルフという種族は、その、暮らしている土地から離れるということはないらしい。

まあ、その事については、確かな立証がされているわけではなくて。

森の外などで彼らの姿を見たという例がない、ということでそう言われているのだけど。


と、そんなわけで。

何度考えても、テティスがエルフと暮らしている?という話を信じられないコウ達は。

コウはその、セレスという人物についてテティスに確認してみることにした。

もしかしたら、自分達の思い違い・・・かもしれないし。


「テ・・・テティスちゃん。その・・・セレスって子は耳が長くとがってるって言ったけど・・・それって」

「あのね。セレス君はね、
『エルフ』なんだよ。だから耳が長くてとがっているの!」


・・・・・・。あっさり肯定されてしまった。


「あ、いや、その子。単に他の人よりも耳が長いー、とか。そういうことだったり・・・」

「違うよ。・・・ていうか。セレス君、自分でも言ってたもん」


・・・・・・。やっぱり肯定されてしまった。

しかも今度はテティス、ちょっとふくれている。

嘘を言っているように思われている、そう感じたのだろう。

コウは、テティスの表情を見る。

・・・どうにも、彼女が嘘や冗談を言っている風には見えない。

そうすると、本当にテティスはその、セレスというエルフと暮らしていて。

そのエルフが、朝になっても帰ってこないのでその行方を捜している、という事なのか。



・・・と、そこで。

コウはそういえば、と、ある事を思い出す。

自分達がこの街へ来る時に通った、グレダの森での事だ。

そこでコウ達は、1人のエルフを見たけれど。

そのエルフの特徴が、今テティスから聞いたエルフの特徴に似ている気がする。

(でも、あの時見たのは女の子っぽかったしな・・・。はっきり確認したわけじゃないからわからないけれど。

だけど・・・テティスちゃんのところからそのエルフ?がいなくなったのと、俺達が

森でエルフを見たのと、時間帯が・・・)

と。


「―それにしても、無事に着いてよかったよなぁ」


背後から聞こえたその声に、コウはハッとして思わず振り返る。

声は、コウ達と同じように、外からこの街に来たらしい旅人ふたりのものだった。

旅人達は、3人の目の前を、何ていう事もなく通り過ぎようとしている。

「どーしたコウ?」

「あ、いや・・・なんとなく、さ・・・」

声をかけてきたマークに振り返らずに返事をしながら。コウは続けてその旅人達の会話を聞く。

それは別に何て事のない、ただの会話のはずだけれど。

不思議に思いながら、マークも、テティスも、なんとなく。

その旅人達の会話に耳をかたむける―。


「本当だな。実際にこの目でエルフ・・・だっけか?見ることになるとは思っていなかった」

「俺、一瞬目があったぜ?・・・魔法でも使われるかと思ってヒヤヒヤしたよ」


「!」

コウは、旅人達の会話の内容に思わず驚いて声を上げた。

(あの旅人、エルフを見たって・・・?)

後ろで、マークとテティスもビックリして顔を見合わせている。

・・・エルフの目撃情報など、そうあるものじゃない。

彼らの見たエルフというのは、もしかして・・・?

「あの旅人に話を聞いてみよう」

コウはそう言って、通り過ぎていった旅人達を呼び止めた。



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